黒い目のきれいな女の子が18人いる!?

「解釈の分かれる文にご用心!」の続きです。
あのあと、井上ひさしさんの本を開いてみてビックリしました。井上ひさしさんはこんな風に発言していたのです。

「黒い目のきれいな女の子」。これだけの短い文に実は十八通りの意味あいがあるのです。

18通りですか! これはタイヘンです。

黒い目のきれいな女の子。

この短い文は、本当に18通りの解釈が成り立つのでしょうか。考えてみましょう。
まず、この文は「女の子」を一語ととるか「女」の「子」ととるかで、解釈が分かれます。

「女の子」を一語とする場合は3通りの解釈ができます。

  • 【解釈1】 「黒い目のきれいな」「女の子」……これは、女の子が、黒くてキレイな目をしているということ。
  • 【解釈2】 「黒い目の」「きれいな」「女の子」……これは、女の子が黒い目をしていて、しかもキレイだということ。
  • 【解釈3】 「黒い」「目のきれいな」「女の子」……これは、女の子の肌の色が黒く、またきれいな目をしているということ。

つぎに、「女の子」を「女」の「子」に分けて解釈する場合はどうなるでしょう。
まずは、「女」に焦点を当てます。ある「女」について、上記の「女の子」の場合と同じ3通りの解釈が成り立ちます。その女の「子」というわけですね。


  • 【解釈4】 「黒い目のきれいな」「女の」「子」……女は黒くてキレイな目をしている。その女の子供。
  • 【解釈5】 「黒い目の」「きれいな」「女」の「子」……女は黒い目をしている。しかもキレイだ。その女の子供。
  • 【解釈6】 「黒い」「目のきれいな」「女の」「子」……女は肌の色が黒い。またキレイな目をしている。その女の子供。

さて、同じような3通りの解釈を「女」ではなく「子」に当てはめることもできます。


  • 【解釈7】 「黒い目のきれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は黒くてキレイな目をしている。
  • 【解釈8】 「黒い目の」「きれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は黒い目をしてる。またキレイな子でもある。
  • 【解釈9】 「黒い」「目のきれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は肌が黒い。またキレイな目をしている。

さらに、修飾語が「女」と「子」に別々にかかる場合もあります。


  • 【解釈10】 「黒い目の」「<きれいな女の>子」……その子供は黒い目をしている。また、キレイな女がその子の母親である。
  • 【解釈11】 「黒い」「<目のきれいな女の>子」……その子供は肌が黒い。また、目のキレイな女がその子の母親である。

ふう〜。ここまでで11通りの解釈ができました。
結論からいえば、日本語としてまあ許されるだろうという解釈はここまでの11パターンではないかと思います。

→黒い目のきれいな女の子が18人いる!?(その2)