アクセントへの注意はいくら強調しても強調しすぎることはない

デートでイタリアン・レストランにでかけたとします。メニューに大きく「シェフのオススメ きのこパスタ」が載っていました。イラストも食欲をそそります。
ではこれを頼もうかと思ったとき、彼女が叫びました。
「ちょっと待って。ここを見て!」
よく見ると、メニューの下の方にゴミのような小さな文字で注意書きがありました。

※毒キノコが含まれている場合があります。ご注意ください。

「オススメ」の言葉に惑わされて、あやうくとんでもない料理を注文するところでした。毒キノコが含まれていたりしたら、せっかくのデートが台無しです。
2人はオーソドックスなマルゲリータ・ピザを注文することにしました。めでたしめでたし。

そんな経験、あなたにもありませんか? え、ないって? 失礼しました。
さすがに「毒キノコ入りパスタ」は極端だとしても、情報の一部だけが強調されることは日常茶飯事です。

タバコのポスターがあるとします。(上の絵)
「スッキリ爽快! メンソール」というキャッチフレーズが目に飛び込んできます。だけどよく見ると隅に小さな字で「脳卒中の危険性が高まります」とも書いてあります。

2つの情報を逆にしてみましょう。(下の絵)
脳卒中の危険が高まります!」というキャッチフレーズが目立っています。隅には小さく「スッキリ爽快!メンソール」と書いてあります。

2つのポスターに書かれている情報はほぼ同じです。でも印象はずいぶん違いますね。どちらのポスターが購買意欲をそそるかは、あえて言うまでもないでしょう。

俳優の石田純一さんがかつてこんな発言をしました。

「文化や芸術といったものが不倫から生まれることもある」

この発言の一部を強調してみます。

文化や芸術といったものが不倫から生まれることもある」

マスコミは結局…

「不倫は文化」

というフレーズで石田さんバッシングを繰り返しました。

文章の一部を強調することで情報が歪んで伝わる。これを「アクセント(強調)の誤謬」といいます。

平坦すぎる世界は物足りない。
だけどデコボコな世界では、転ばないための心構えが必要なのです。