デザインは機能だ(札幌&東京五輪のエンブレム)

ジッパー型イヤホン

面白いモノを買った。ジッパー型のイヤホンである。羽田空港売店で見つけたのだが、けっこう人気なのだそうだ。

僕が感心したのは、「ジッパー」であることが単なる見かけの面白さにとどまらず、機能と一体化していることだ。ジッパーを上げて閉じることで、コードの絡まりを防ぐことができる。そこにデザインの必然性、存在理由がある。

札幌五輪エンブレムの機能性

単なる飾りにとどまらない「デザインと機能の一体化」で、最近知って感心したのが、札幌オリンピック(1972年)のエンブレムである。五輪エンブレムのデザイナーである永井一正氏ご本人が書いた記事が興味深い。

NIPPON DESIGN CENTER 札幌冬期オリンピック シンボルマーク

記事によると、札幌オリンピックのエンブレムデザインは、デザイナー8名による指名コンペで、制作にあたっては次の条件がつけられていた。

  • 五輪マークと「SAPPORO1972」の文字を入れること
  • 日本語と冬または北海道を象徴すること

そして最終的に採用されたのが永井一正氏の「3つの正方形ユニットが変化するロゴマークのデザイン」だ。このデザインのポイントは3つある。

  1. 日本の象徴として日の丸を用いた
  2. 日の丸の赤は冬のイメージと正反対になってしまう。そこで日本の古い紋章から「初雪」の紋章を選び、日の丸と同じウェイトで用いた。
  3. それぞの要素を3つの正方形を用いて、可変性のあるマークとして整理した。

特に感心したのは3番目の「可変性のあるマーク」についてである。エンブレムに盛り込まれた要素を3つの正方形に整理することで、縦にも横にも、さまざまな状況で使用できることになった。これもまた機能とデザインがマッチした好例だと思う。

東京五輪エンブレムのオリジナリティ

さて、この「デザインと機能の融合」という観点からすると、いま物議を醸している2020年東京オリンピックのエンブレムはどうだろうか。

皆さんご存知のとおり、今回のコンペで採用されたデザイナーは佐野研二郎氏である。また、コンペの審査委員長は上記の永井一正氏だったそうだ。

佐野氏に関していえば、サントリーのトートバッグについては、やはりクロだと思う。サントリーという一流企業のキャンペーンでネットから拾ってきた写真をそのまま使用というのは、プロとしての責任感が不足していたと言わざるを得ないだろう。

とはいえ、東京オリンピックのエンブレムに関しては、デザイナーとしてのアイデアや意気込みを認めてあげたい気持ちになる。

2020年東京オリンピックのエンブレムは、このような四角と円からできている。

ここに色を付けると、「T」の文字が浮かび上がり、オリンピックのエンブレムになる。

また、別の色づけをすると、こんどは「=」が(縦に)浮かび上がり、パラリンピックのエンブレムになる。

シンプルな図形の組み合わせで、オリンピックとパラリンピックの図案を浮かび上がらせる。このアイデアは、札幌オリンピックロゴの機能性とはまた違うけれど、2つの大会を通じた人間讃歌を表現するためのオリジナルのアイデアなのだと思う。

まとめ

機能と一体化したデザインにはオリジナリティがある。佐野研二郎氏をことさら擁護するつもりはないけれど、東京オリンピックパラリンピックを合わせて見たとき、そこにはベルギーの劇場マークとの見かけの類似性にとどまらないアイデアの独自性がある。そこは改めて評価してあげたいなと思うのである。