とんがり帽子の交番

銀座のはずれにある交番が前から気になっていた。なんでこんなとんがり帽子みたいな屋根なんだろう。この屋根の中に何かあるのか。お巡りさんが住んでいるのだろうか…? 


昨日また通りがかったので、勇気をだして質問してみることにした。

「すみません。こちらの交番はすごく個性的なデザインですね。これは何か理由が…」

ぼくが言い終わらないうちに、お巡りさんは道路を隔てた向かい側を指さした。

「ほら、あれが見えるでしょう」


なるほど。今はアスファルトの道路だけど、ここは江戸時代からある京橋のたもとだった。視線の先には、石造りの親柱がある。

「あれをパクったんですよ」

…パクっていいんだろうか、警察が。

「パクった」はご愛嬌として、この銀座一丁目交番は京橋たもとの「ガス灯」(大正十一年竣工)に倣って昭和五十年代に建てられたそうだ。

「この屋根の中には、何かあるんですか?」

「なあんにもない。がらんどうですよ」

にこにこして答えてくださったお巡りさん、どうも有り難うございました。


参考:築地警察署 銀座一丁目交番