とんがり帽子の交番
銀座のはずれにある交番が前から気になっていた。なんでこんなとんがり帽子みたいな屋根なんだろう。この屋根の中に何かあるのか。お巡りさんが住んでいるのだろうか…?
昨日また通りがかったので、勇気をだして質問してみることにした。
「すみません。こちらの交番はすごく個性的なデザインですね。これは何か理由が…」
ぼくが言い終わらないうちに、お巡りさんは道路を隔てた向かい側を指さした。
「ほら、あれが見えるでしょう」
なるほど。今はアスファルトの道路だけど、ここは江戸時代からある京橋のたもとだった。視線の先には、石造りの親柱がある。
「あれをパクったんですよ」
…パクっていいんだろうか、警察が。
◆
「パクった」はご愛嬌として、この銀座一丁目交番は京橋たもとの「ガス灯」(大正十一年竣工)に倣って昭和五十年代に建てられたそうだ。
「この屋根の中には、何かあるんですか?」
「なあんにもない。がらんどうですよ」
にこにこして答えてくださったお巡りさん、どうも有り難うございました。