JTさんに質問:パッケージ警告文の内容に同意していますか?

タバコの箱にはいろんな警告文が載っていますね。でもこの文面を発売元のJTさん自身は認めているのでしょうか?
「え…もちろん認めているんでしょ」…私が聞いた人はみんなそう答えました。でもちょっと違うんです。JTお客様センターに問い合わせた結果をご報告します。


きっかけは「多様性の尊重」というCMでした。

世の中にはさまざまな人がいる。
それぞれの思いがある。
たばこについても同じだと思う。
吸う人、吸わない人、好きな人、きらいな人。
さまざまであるということの大切さ、
真剣に考えていきたい私たちです。
JT

いかがですか。素晴らしいCMですね。だけど私はなんだか違和感を覚えました。

たとえば中学校で何か問題が生じているとします。だけど担任の先生は問題の中身や原因にはいっさい触れることなくホームルームで「みんな仲良くしましょう」と呼びかけている…。たとえるなら、そんな違和感でした。

そこでJTお客様センターに質問してみることにしました。実際には保留時間も含め20分ほどの会話になりましたが、ここではメモと記憶に頼って要点だけを紹介します。

質問は大きく3つあります。


◎Q1:JTはパッケージ警告文の文面を認めているかどうか?

私:「質問学」というブログを運営しているフジモトといいます。

JT:はい。

私:「多様性の尊重」というCMを拝見しました。すばらしいCMですね。

JT:ありがとうございます。

私:でもちょっと疑問に思ったことがあるんです。

JT:なんでしょう。

私:タバコの煙をめぐっては「実はからだに悪い」とか「いや悪くない」とか、いろんな意見がありますね。でもJTさん自身がどんな見解なのかがよくわからなかったので、確認したいと思ったんです。

JT:そうですか。

私:たとえばタバコの箱の警告文「たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないように注意しましょう」JTさんはこれらの警告文の内容に同意されていらっしゃるんでしょうか?

JT:これはいわゆる注意文言(ちゅういもんごん)といって法律で決まっていて、記載しないと国内で販売ができないんです。

私:内容については同意しているんですか?

JT:記載するという行為に関しては納得していますが、ひとつひとつの文言に対しては答える立場にはありません。

私:つまり注意文言の内容については、必ずしも認めているわけではないということですね。

JT:そうですね。判断する立場にないので、データの信憑性ですとか、文言についてのお問い合わせは厚生労働省にお願いします。


◎Q2:JTフィリップモリス社の見解が異なることについてどう考えているか?

私:つぎは競合他社さんのフィリップモリス社さんの話になるんですが…

JT:はい。

私:フィリップモリスさんのホームページでは、タバコの煙が周りの人にさまざまな健康被害を与えるという内容が載っていますね。公衆衛生機関の結論に、みんなが従うべきであると。これについてはご存知でしたか。

JT:そういったお話があるということは認識しております。

私:一方で、JTさんはタバコの煙が周りの人の健康に悪影響を及ぼすことを認めていないように見えます。この違いについてはどうお考えですか?

JT:わかりづらい場所にあると思うんですが、私どものホームページはご覧になりましたか。

私:はい。「環境中たばこ煙」というページに細かい字で書いてありますね。「環境中たばこ煙は非喫煙者の疾病の原因であるという主張については、説得力のある形では示されていません」と。一応読んでみましたけど、私たち素人には小難しくて何がどうだかよくわからないんですけど。

JT:たとえばタバコの害ですとかそういった内容については、すべてホームページに書いてあるとおりです。

私:WHO、IARC(国際がん研究機関)、日本では国立がん研究センターなどのあらゆる専門機関、またフィリップモリスさんも含めた関係者とくらべて、JTさんだけが違うことを仰っているように思えるんですが。

JT:私どもの会社といたしましては、ホームページに記載されている内容を主張しています。他社さんの主張に対してどうこうということはありません。


◎Q3:タバコの煙の影響について、JTでは誰がどんな基準で判断しているのか?

私:そうすると、JTさんの社内では、喫煙が周りの人の健康に与える影響についてどなたが判断されているんですか? 専門部署があるんでしょうか?

JT:いえ、そのような部署はありません。分煙について対応させていただいている部署ならありますが。

私:分煙というのは、要するに解決策ですよね。それ以前の問題として、タバコの煙がどの程度人体に影響を与えるかという事実認識についてどなたが判断しているのかお伺いしたいんですが…

JT:専門の部署はありませんが、さまざまな文献ですとか情報を収集いたしまして見解を出しております。

私:ということは、JTさんが独自判断しているということでしょうか。

JT:さまざまな文献を読んだうえで独自判断…会社としての見解を出しているということです。

私:なるほど…たとえば国立がん研究センターのホームページを見ると、受動喫煙と肺がんの関連性について「ほぼ確実」と載っていて、一方、JTさんは違う見解を出しています。だけどその理由がはっきりしないんです。たとえ見解が違うとしても、その理由が誰が見ても明快になっていればいいんですけどね。

JT:「どなたが見てもご納得いただけるような文面があるといい」というご意見については関係部署に申し伝えたいと思います。


◎まとめ

JTさんの対応、いかがでしたでしょうか。
私なりにざっくりまとめると、次のようになります。

  • Q1:パッケージ警告文を載せることには同意しているが、内容には必ずしも同意していない。
  • Q2:タバコの煙が他者に与える影響について専門機関や他のタバコ会社(フィリップモリス)と見解が異なっているが、それについてはホームページの記述以外に答えられることはない。
  • Q3:誰がどんな基準で文献を判断しているのかは、はっきりしない。

JTのCMキャンペーンや分煙キャンペーンには、何十億、何百億円の予算が使われていることと思います。
一方、「たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします」という警告文の内容を認めていない理由については、今のところ誰にでもわかる明快な説明はありません。
電話での質問を終えてみて、CMキャンペーンのせめて100分の1でもいいので労力をかけて、わたしたち一般の人にもわかりやすい説明をしてもらいたいなあと思いました。

JTさん、よろしくお願いしますね。