三島由紀夫『葉隠入門』

韓国の友達から「日本の哲学書でオススメのものを教えてほしい」と質問。
「え、そんなの知らない」と思ったけれど、少し範囲を広げて、思いつくまま次の4つを回答してみた。

  • ビジネスの心得にも応用が利くとも言われ見直されている、宮本武蔵五輪書
  • 広く読まれ始めたのは20世紀に入ってから、それまでは一族の秘伝の書として一般にはほとんど知られていなかった世阿弥風姿花伝
  • 「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」の「悪人正機説」で有名な『歎異抄
  • 「武士道というは、死ぬ事と見つけたり」の一節が有名な『葉隠

最初の2つは読んだことがあるが、後は未読。

先週、出張先の本屋でたまたま見かけたので三島由紀夫葉隠入門』を購入して、帰りの飛行気でパラパラと読んでみた。

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり。二つ二つの場にて、早く死ぬはうに片付くばかりなり」
(訳)武士道の本質は、死ぬことだと知った。つまり生死二つのうち、いずれを取るかといえば、早く死ぬ方をえらぶということにすぎない。

生死2つを常に心において、万一のときには死の側を選ぶ…この指針を実際に私たち自身が採用するかどうかは別の話として、この指針を心にいだいて生きる者は、そうでない者とまったく別の世界で暮らすことになることだろうと思った。

ぼくはこの部分を読んで、スティーブ・ジョブズが毎朝自分に問いつづけた質問を思い出した。「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やることは本当にやりたいことだろうか?」という質問。

それから、別の問いも浮かんできた。
「何のためになら、自分は死ねるだろう?」…家族、それとも何らかのアクション?

読書の方法はひとつにかぎらない。
そこに書かれたことが正しいか正しくないか、また自分がそれを採用するかしないか、だけではつまらない。

本の言葉を念頭におきながら、自分なりの質問を見付け何度も問い直していく、そんな読み方もあるんじゃないだろうか。