鍵となる質問…「なぜ、話が通じないのか?」(4)

なぜ、話が通じないのか?

去年の4月末と6月初旬に行われたBS番組の「SMOKE WARS」は、コミュニケーションについて考えるうえで、いい転機になったと思う。

BSスカパーBAZOOKAという番組で、中部大学教授・武田邦彦氏が「タバコと肺がんは無関係」という論を展開。賛否両論の反響があり、禁煙側の論者を募集することになった。番組側の話では医者や禁煙運動家など20人以上に断られたらしい。ぼくは科学リテラシーに感心があり、また小谷野敦室井尚養老孟司などの「インチキ科学」をネットで批判していたので、話が回ってきたときは迷うことなく承諾した。結局ぼくは岡山大学の津田敏秀先生、「リセット禁煙」の磯村毅先生とチームになって、生番組に出演することになった。

そのときぼくがもっていた「問い」は、「いかにしてニセ科学に対抗するか?」あるいは「平気で嘘をつく人間の嘘をどうやってあばくか?」だった。しかし、その方針が上手くいったとはいえなかった。打ち合せやリハーサルで上手く進んだことが本番では機能しなかった。とくに初回の討論では。

みなさんも、考えてみてください。仕事でも、学問でも、趣味でも、あなたが真剣に取り組んでいる分野があるとします。そこに門外漢がやってきて(しかし権威者の態度を保ちながら)「明らかな嘘」をつくとします。それが嘘であることは、その分野について多少の知識があれば一瞬でわかります。しかし、嘘をついている人間に「あなたの言っていることは嘘だ」「デタラメだ」というだけでは、周りで見ている第三者には決して伝わらない…

主張した内容に関していえば、ぼくにはやましいところがない。もちろん、あのテレビ討論から1年以上が経っても、「実はタバコと肺がんは無関係だった」などという話はでてこない。(それどころか、国立がん研究センター受動喫煙と肺がんとの因果関係を「ほぼ確実」から「確実」に強化したことが報道で伝えられている)

仮に、武田氏と討論の話が再びあれば、どうするか? ぼくは迷いなく参加するだろう。世界中の誰に対しても、正々堂々と主張することができる。あとは、どう伝えるかの問題である。

ただ、そこでぼくが持つべき問いは1年前の「いかにしてニセ科学に対抗するか?」「平気で嘘をつく人間の嘘をどうやってあばくか?」とは別の問いになるはずだ。たとえば「どうすれば徹底的に視聴者・読者に寄り添って伝えられるか?」という質問になってくるだろう。

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