タツノオトシゴの寓話

タツノオトシゴの王子が病にかかった

医者が眉間に皺を寄せてつぶやいた

王子のために2つの選択肢がある

第一の選択肢
いますぐ手術する
しかし王子の身体が手術に耐えられないリスクもある

第二の選択肢
薬で体力の回復を待ってから手術する
しかし手遅れになってしまうリスクもある

さて どちらを撰ぶべきか

そのとき王国のあちこちから
数えきれないほどのタツノオトシゴがやってきて
口々に叫んだ

手術だ…いや時期尚早だ…
薬を飲んで待つべきだ…手遅れになってしまう…
手術だ…薬だ…もう待てない…少なくとも今ではない…

喧噪のなかで タツノオトシゴの王子は死んでしまった

問題は手術か薬か…ではなかった
決断するシステムが存在しないことだった

王子の死体は投げ捨てられた…じゃぱん