「肺がんになったら他のがんにはならないんですか?」

一昨日のブログ記事「ニセ科学本」はデータをどう扱っているか?はなかなか好評で、丸2日経たないうちにフェイスブックのシェアが350を越えている。科学リテラシーの一助となれば幸いである。

肺がんになったら他のがんにならないか?

さてBAZOOKA討論については番組収録から1ヶ月近く経ったいまも視聴者の方とYoutubeコメント欄で質疑応答が続いている。これは私自身が頭のなかを整理するうえでもとても勉強になる。今朝はこんなコメントをもらった。(正確には質問ではないが、ここでは便宜上質問とさせてもらいます)

【Q】武田先生が言うように、原発性の癌が複数起こることはあまりないのか?

動画の34:08〜で次のようなやりとりがある。

  • 沙羅マリー:「肺がんになったら他のがんにはならないんですか?」
  • 武田邦彦 :「なりにくいですね。一般的に」「(転移ではなく)原発性のがんが何種類も体におこることはあまりない」

同時に異なる部位で発生するがんを「多重がん」という

この武田氏の回答は不正確である。がんが同時に異なる部位で発生することがあり、それを「多重がん」という。多重がんには2種類あり、それぞれ「多発がん」と「重複がん」という。詳しくはリンク先の説明が分かりやすい。喫煙と多重がんの関係にも要注目である。
多発がん・重複がん・多重がんの定義と違い

多重がん:同時に異なる部位で発生するがん

  • 多発がん:同じ臓器に原発がんが複数できる
  • 重複がん:他の臓器にも原発がんが認められる

タバコの喫煙は肺がんや胃がんの原因になりますが、喫煙により喉頭、肺、咽頭、食道、膀胱などに多重がんが発生しやすいとされています。

また、肺がんを専門にしているお医者さんからは次のような回答をいただいた。

  • 喉頭がん・食道がん前立腺がんなどと肺がんの合併症は時々ある。
  • 時期をずらせば、胃がん・大腸がんになったことのある人はいくらでもいる。

たとえ話「ある町の交通事故」

肺がんになったからといって、ほかのがんにかかりにくいという根拠はない。これは次のように例えることもできる。

ある町ではだいたい1ヶ月(30日)に1回の確率で交通事故が起こる。同じ日に2件の交通事故が起こる確率は30×30=900日に1回である。同じ日に3件の交通事故が起こる確率は30×30×30=27,000日に1回である。
同時に複数の交通事故が起こる確率はもちろん小さい。しかし、ある場所で交通事故が起きたからといって、それが別の場所の交通事故を抑制するわけではない。

まとめ

  • 原発性のがんが複数同時に発生することがあり、これを「多重がん」という。
  • 喫煙習慣があると多重がんになりやすい

沙羅マリーさんのお知り合いの方がいらっしゃったら、ぜひ教えてあげてください。