なぜ酸素で冷やせるのか?

この写真は半世紀前の名古屋の体育館。空調設備がなかったので、大相撲名古屋場所では蒸し風呂状態になっていたという。中入り前と中入り後の休憩時間に酸素を放出して館内の温度を下げていたのだという。

「シューッとすごい音を立てて7千リットル入りの酸素ボンベから酸素が躍り出る。耳をつんざく勢い。2度くらいは館内の温度が下がるという」
(当時の朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASH7G4KC2H7GOIPE00V.html

しかしなぜ、酸素を放出すると温度が下がるのだろう。これはどうやら冷蔵庫と同じ原理のようだ。圧縮された液体が気体になるときに冷蔵庫の中の熱を奪うのである。
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/chemical_wondertown/electric/page01.html

調べると、7000リットル入りのボンベだと、実容積が47リットル程度らしい。液化した7000リットルの酸素が150倍ほどの体積になる(7000L=3.5m×2m×1m)。この過程で気化熱を吸収するから部屋の温度が下がるというわけだ。
http://daitoh-mg.jp/standard/bombe-variation.html

夏場、家の前に水をまく「打ち水」も、まいた水が蒸発するときに道路から熱を奪って涼しくなる。つまり打ち水も冷蔵庫も原理は同じなのである。
https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/netuworld/kikanetu/kikanetu.html


(追記 2015/7/20)
ボンベから酸素を放出して冷やす原理はむしろ「ボイル=シャルルの法則」では、という指摘をいただきました。

<ボイル=シャルルの法則>
「気体の圧力Pは体積Vに反比例し絶対温度Tに比例する」

ボンベから酸素が放出されて圧力が下がると、体積は増大し、温度は下がる。

ちなみに、昔懐かしい水飲み鳥は「気化熱」と「ボイル=シャルルの法則」を利用した、日本発のオモチャだそうです。

(1)頭部のスポンジから水が蒸発して温度が下がる(気化熱)
(2)温度の低下により頭部の気圧が下がる(ボイル=シャルルの法則)
(3)頭部と胴体の気圧差により管内の液面が上昇する