【喫煙と肺がん】古い研究ばかりで最新データはないの?

Youtubeコメント欄の質疑応答から。面白い質問があったので私の答えをメモしておきます。

【Q】
喫煙と肺がんの因果関係を示す根拠となる研究はどれも20年以上前のものばかり。最新の研究がないのはおかしいのではないか?

【A】
研究が古いのはある程度やむをえないこと。


【画像引用】U.S. Panel: Lung Cancer Screening For Heavy Smokers

理由を「予算と労力」「研究テーマ」「現状」の3点から述べます。

理由1:大規模な研究には予算と労力がかかる

まず大前提として、調査には予算も労力もかかります。たとえば、9万人を10年間調査するのは大変な作業です。しかも、その期間内に肺がんになるのは400人程度。大規模な調査をいつでも簡単に行えるわけではありません。

理由2:研究テーマとしてはすでに決着済み

「喫煙と肺がんの因果関係」については何十年も昔に決着済みになっています。もちろん、数十年前には、因果関係の有無をめぐって激しい論争が繰り広げられました。その結果、喫煙と肺がんの因果関係は揺るぎないものとなっています。
現在、「喫煙と肺がんは無関係」と主張して論文を発表するような学者は世界中どこにもいません。

国立がん研究センターのサイトを見ると、近年どんな研究が行われているかが分かります。

(最近の研究発表例)

  • 受動喫煙歯周病のリスクとの関連について(2015)
  • 5つの健康習慣とがんのリスク(2012)
  • 禁煙後の糖尿病リスクについて(2012)
  • 喫煙・飲酒・肥満度の組み合わせとがん発生
  • 循環器系疾患発症について(2009)
  • 喫煙習慣・コーヒー・緑茶・カフェインと膀胱がん発生リスク(2008)
  • 飲酒と肺がんリスク(2008)
  • 受動喫煙と肺がん(2007)
  • 肺がん家族歴と肺がんリスク(2006)
  • 喫煙と虚血性心疾患との関係 (2006)
  • 喫煙と自殺の関係 (2005)

【出典】国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)リサーチニュース]

理由3:結果は補強されている

「喫煙と肺がん」という学問的に決着済みの研究をわざわざ行うことはないでしょう。 とはいえ、ここの関連研究の中で、喫煙と肺がんの因果関係は追認・補強されていると考えるべきです。
逆に、「喫煙と肺がんは無関係」「喫煙は肺がんリスクを減少させる」というような結果がでたら、それは世界的な大ニュースです。 しかし、そんな研究発表は世界中どこにもありません。

まとめ
  1. 大規模な調査には予算も労力もかかるから簡単にはできない。
  2. 喫煙と肺がんの因果関係はとっくに決着済みなので、現在の研究は次の段階に進んでいる。
  3. 現在の個々の研究においても、喫煙と肺がんの因果関係は補強されている。(それを反証する研究発表は、世界中どこにもない)