【Q】因果関係を調べるには疫学以外の方法はあるか?

コメント欄でいい質問をもらったので、私の回答と合わせて載せておきます(…といっても、この連休は自宅にいないので、一切調べずに書いています。この回答はとりあえずの叩き台ということで。補強点、修正点などあれば、遠慮なくご意見ください)

ゆにげる はじめまして
藤本さんが疫学的に正確であると考えておりかつ、たばことがんとの因果関係がない論文というのは少数でも存在するのでしょうか。もしあるならどのように解釈しているのでしょうか。(例えば例外的な論文など)。
因果関係を調べるには疫学以外の方法というのはあるのですか。疫学的方法をとっていないものは学会では門前払いなのでしょうか。

因果関係を否定する論文はあるか?

【Q】タバコと肺がんに因果関係がないという論文はあるか?

【A】十分信頼性のある論文においては存在しないはず。

極端な話、調査したサンプルが10人だとしたら、「喫煙者の方が肺がん死が少ない」という結果が偶然でることもありえますよね。実際の調査では集団の母数をもっと大きくしますが、予算や労力の兼ね合いもあり、「いくらでも大規模に」というわけにはいきません。そのため、単独の調査では十分に信頼性のある結果がでないこともあります。

そのときに考えられる可能性としては…

(1) 喫煙と肺がんには因果関係がない
(2) 調査のデザイン(計画)に不備があった
(3) たまたま、「因果関係が現れない」方の結果がでた

などが考えられます。受動喫煙の調査などでは、単独の調査で十分な結果がでることはむしろ少ないのではないかと思います)
このようなときには、調査自体の信頼性を検証し、(2)か(3)だと判断されることが多いと思います。

疫学の場合、単独の調査で「100%確実な結果がでる」というよりも、多くの調査を重ねていった結果、より信頼性が増すのだと考える方がいいでしょう。
複数の調査を総合的に判断する「メタ分析(メタアナリシス)」という手法も確立されています。「能動喫煙と肺がんの因果関係」「受動喫煙と肺がんの因果関係」ともに、メタ分析を経て、因果関係は確実だとされています。

疫学以外の方法はあるか?

【Q】因果関係を調べるには疫学以外の方法はあるか?

【A】他の方法もあるが、最終的には疫学的方法が重視される。

大きく3つの方法があると思います。
(1) 疫学的方法
(2) 動物実験
(3) メカニズムの解明

どの方法も重要ですが、(1)が欠けていると、専門機関では因果関係が認められないはずです。

これはたとえば薬の効用や副作用を調べる時も似ていますね。動物実験で効き目があっても、人間に効くかどうかはわかりません。また、「○○というメカニズムで効き目があるはずだ」という仮説を立てても、最終的には人間の集団で調査する必要があります。

タバコの場合も同じです。動物実験の結果も大切ですが、それだけでは最終判断はできません。また、タバコの煙の成分がどのようなプロセスで発がんを促進するかという研究も進んでいますが、何十年にも渡る因果関係をそれだけで確定することはできません。
(1)(2)(3)が、互いに矛盾なく、補強されあって、タバコの有害性が確定していると考えてよいと思います。ただ、その中でも(1)を無視することはできないということです。