「北風と太陽」余話

イソップ寓話の「北風と太陽」。ストーリーは誰もがよく知っているはずだ。
北風と太陽がどちらが強いか言い争いをする。道行く人の服を脱がせたほうが勝ち。まず北風が強く吹いたが、男はしっかりと着物を押さえるばかり。さて、つぎは太陽の番。太陽がじわじわと照りつけると、男はついに素っ裸になって川に飛び込んだ…という話。
「説得が強制よりも有効なことが多い」というのが、この話の元の教訓である。
(参考:『イソップ寓話集』岩波文庫

ところが、wikipedia「北風と太陽」の項目をみると、見たこともない話が追加されている。

(前略)
これには、また別の話もある。北風と太陽がした勝負は最初は旅人の帽子をとることだった。最初、太陽は燦燦と旅人を照り付けると、旅人はあまりにも の日差しで帽子をしっかりかぶり、決して脱がなかった。次に北風が力いっぱい吹くと、みごと簡単に帽子は吹き飛んでしまった。その次に行った勝負は旅人の 上着を脱がす勝負だった。この勝負の結果は周知の如くである。
この別の話の教訓は、何事にも適切な手段が必要である、ということである。一方でうまくいったからといって、他方でもうまくいくとは限らない。その逆も然り。しっかり、結果を見据えて、手段を選ぶべきである。

どこのどいつだ、こんな話を付け加えたのは!?
wikipediaの履歴項目をみると、2008年4月19日に誰かが匿名で追加したようだ。英語版にはこんな話は載っていないし、おそらくは誰かのいたずらなのだろう。(経緯がわかる人がいたら教えてください)

出典も明記せずにオリジナルの話を追加するのはウィキペディアのルール違反だ。削除されても文句はいえない。
とはいえ、元来、民話・伝承の類いは、こんなふうに話が加わったり削られたりしながら時代のなかで変形していくのかと思うと、ちょっと感慨深くもある。