メトロポリタンとナポリタン

NHK「みんなのうた」で人気になった「メトロポリタン・ミュージアム」という、ちょっと不思議な歌がある。

♪大理石の 台の上で
 天使の像 ささやいた
 夜になると ここは冷える
 君の服を 貸してくれる?
 タイムトラベルは 楽し
 メトロポリタン ミュージアム
 赤い靴下で よければ
 かたっぽあげる

先日放映された「みんなのうた」50周年特番で、作詞・作曲の大貫妙子が、この歌の誕生エピソードを語っていた(らしい)。
「こどもの好きなものといったら…カレーライス…ナポリタン…メトロポリタン!」と、連想を働かせたのだそうだ。
単純というか、むりやりというか、そんなところから名曲が生まれるのは面白い。

検索すると、大貫妙子さん本人のインタビューもあった。

(前略)みんなのうた、というと子ども向けのように思われますが、私は基本的に大人向け、子ども向けというようなつくりかたはしません。ただテレビから流れてきた 時に「ん?」と気を惹く何かが必要です。そして考えたのが「子供が好きなモノ」でした。カレーライス?ハンバーグ?オムレツ?ナポリタン・スパゲティー
それを口の中で繰り返しているうちに…。
ナポリタン…ナポリタン…ナポリ…ん?メトロポリタン!!!となったわけです。メトロポリタン・ミュージアムをテーマにすれば、大人が聞いてもけっこう楽しめる!と思ってつくりました。

※大貫妙子・文化庁メディア芸術プラザ

この「ナポリタン」と「メトロポリタン」。実はまったく無関係というわけではない。

まず、「ナポリタン」というネーミングはイタリアの都市「ナポリ」からきている。(ちなみに、こんなパスタ料理はイタリアにはない。日本独自のもの)。
ナポリの誕生は紀元前6世紀。古代ギリシャ人が植民都市を建設し「ネアポリス」(新しいpolis=都市)と名付けたのがそもそもの始まりだ。

一方、「メトロポリタン」(メトロポリス=首都、主要都市)も、古代ギリシャ語の「メトロ」と「ポリス」から来ている。
「メトロ」は「メーテル」、「母」という意味だ。(松本零士の『銀河鉄道999』に登場する謎の美女メーテルもここから名付けられたのだろうか。)
そして「ポリス」は「都市」。つまり「メトロポリス」とは「母の都市」「諸都市の中心となる都市」「首都」という意味になる。

♪タイムトラベルは楽し
 メトロポリタン ミュージアム
 大好きな絵の中に
 とじこめられた

ナポリタン(新しい都市の)とメトロポリタン(母なる都市の)と。二千数百年の時間旅行を介してつながっていると考えると面白い。