JTの広告と「別の見方」

人気フリーペーパー「R25」には、毎回、JTの広告が大きく掲載されています。今日はこのJT広告を題材に "alternative view"(別の見方)について考えてみましょう。

見開き広告の右半分にはハムレットの後ろ姿のイラストが描かれています。

亡霊となって現れた父の言葉に、
苦悩するハムレットが、
もし俺だったら、
とりあえず一服するな。

ハムレットは苦悩する人物の典型です。ここではハムレットを介して「悩んでいるときにはタバコを吸いたくなる」という喫煙者の実感が示されています。
では、見開き広告の左半分を見てみましょう。

こちらには広告メッセージがさらにはっきりと示されています。

行き詰まったときや、考えごとをしているときなど、たばこを吸うと、頭がすっきりして課題に集中できます。
ハムレットがもしたばこを吸っていたら、別の解決方法が見つけられていたかもしれません。
喫煙は、たばこを吸われない方への配慮があった上で、ささやかながら人生にひとつ多くの愉しみをもたらしてくれる、大人の嗜みです。

「たばこを吸うと頭がすっきりして課題に集中できる」という見方が提示されています。
とはいえ、ものごとには表があれば裏もあるもの。この広告メッセージに対する"alternative view"(別の見方)は、どんなものでしょうか。

それは、「喫煙そのものがストレスの原因となっている」という見方です。

喫煙者がニコチンを吸うと、わずか6秒ほどで脳にニコチンが補給され、一時的にスッキリした快感を味わうことができます。しかし30分もたたないうちに、こんどはニコチン切れのストレスが襲ってきます。
そのイライラを解消するためにニコチンを補給して、一時的にスッキリする。でもまたすぐニコチンが切れるとイライラする…。この繰り返しは死ぬまで終わりません。

非喫煙者が感じることのないストレスを喫煙者は常に抱え込んでいる…これが、このJT広告に対する「別の見方」です。

さらに、メインのメッセージを見てみましょう。

好きなものを
ひとつ多く
持っている

これ、いいコピーだと思います。ぼくは、けっこうJTの広告って好きなんです。
「大人たばこ講座」シリーズのイラストレーターが書いた本も愛読しています。

ま、それはそうと、「好きなものをひとつ多く持っている」というのは、ぼくらが毎日生きていくうえで、ちょっと嬉しいことですね。このコピーが何らかの真実を表していることは認めておきましょう。

それでは、ここで示された考え方「たばこ=好きなものをひとつ多く持っている」の"alternative view"(別の見方)は何でしょう。

ひとつは、「タバコが自由を奪う」という考え方です。
習慣的に喫煙している人が3日間タバコを吸わないでいることには、大変なストレスを伴います。喫煙者は「好きなものをひとつ多く持っている」ようでもありますが、医学的には「ニコチン依存」という症状に陥っているのだ、という見方ができます。
また、「好きなものをひとつ多く持っている」一方で、「失うものが多い」という見方も可能です(広告の下段にも警告文がありますね)。

広告にはメッセージがあります。よくできた広告であるほど、見る人の心を動かし、メッセージを忘れられないものにします。
だからこそ、広告のメッセージに共感を覚える一方、頭のどこかでは「別の見方」を持っていることが大切なのじゃないかなと思うのです。