古代エジプト人の見方

稚拙な絵で恐縮だが、人間を横から描くとこんな絵になる。この場合、モデルの男の右側から見た姿が表現されているわけだ。

ところが古代エジプトの様式では、視点は統一されていない。人間の部分は、その特徴が一番良くわかる向きで描かれている。


    • 顔は、横顔。
    • 目は、正面。
    • 上半身は、正面(腕と胴のつながりがよくわかる)
    • 腕と足は、横(動きがよくわかる)
    • 両足とも内側から(親指が見える方がわかりやすい)

ここで採用されている規則は、「人間の形として重要だと思うものは、なんでも絵に組み入れていい」というものだ。
そしてこの規則は、あたかも永遠不変の真理であるように、何千年にもわたって受け継がれた。

視点を定めて瞬間をリアルに描写する現代の常識的な手法と、重要だと思うものをひとつの絵のなかに配置する古代エジプトの手法。どちらか一方が正しいというわけではない。両者はちがったルールに則っているだけだ。

未来の人類からみれば、現代人の思考もヘンテコなルールに従っているように見えるかもしれない。

(参考)
『美術の物語』(E.H.ゴンブリッチ著/PHAIDON)