1/2の予言者

闇のなかから予言者が現れた

予言者の顔の
半分だけが
闇に浮かび上がっていた

わけではない

あろうことか
予言者には
片側しか存在しないのだ

予言者はこうつぶやいた

今日私たちが出会う確率は
1/2だった
なぜなら私たちは
今日出会うか
それとも出会わないかの
どちらかだったからだ

ぼくは予言者に尋ねた

つぎに大地震が起こるのはいつだろう?

予言者は重々しい口調で答えた

今日から10年以内に大地震がくる確率は1/2
なぜなら大地震
10年以内に起こるか起らないかの
どちらかだからだ

全身に鳥肌が立った

明日、大地震が起こる確率は?

彼は眉間に皺を寄せ、絞り出すように答えた

明日、大地震が起こる確率は1/2
なぜなら大地震
明日起こるか起こらないかの
どちらかだからだ

コロコロコロ…
ポケットからサイコロがこぼれ落ちた

このサイコロを振って
1の目がでる確率は1/2
なぜならこのサイコロは1の目がでるか
でないかのどちらかだからだ

私は開いた口がふさがらなかった
そして
最後に予言者はウインクしながら囁いた

片目を閉じれば、世界は半分になるぜ

→1/2の予言者は何がおかしいのか?(確率の定義)