【武田討論】正しいだけじゃ、ぜんぜん足りない

BSスカパーBAZOOKAの武田邦彦討論について、長文の応援コメントをもらったので紹介します。大学で疫学を学んだという方からです。

先日番組を全て観させていただいた者です。
疫学自体を学生の頃に学んで論文作成しておりましたので、番組があのような雰囲気になったことが非常に興味深かったです。
また実際コメント上でも武田先生擁護の声がこれほど強いことに驚きを隠せませんでした。

武田先生の根拠のない発言および感情論、安易な喫煙擁護に対して、正確な統計、根拠、データの提示およびコホート研究における罹患率の明らかな違いなど、津 田先生を中心に提示できていたと思います。確かに、暴露群・非暴露群における前向き研究という疫学独自の手法や年齢調整、交絡因子の除去など予備知識無し だと難しい部分がもしかしたらあったのかもしれないですが、ある程度の国語力があれば一瞬でどれほど武田先生の主張が意味不明か理解できるはずなのです が…

むしろ、あの武田先生の主張に対して、あれ以上の解答、つまり、暴露群の肺がん罹患率が非暴露群より10倍高い。という単純明快な答えより、上の解答などあるのでしょうか。
ただ少し、津田先生が議論慣れしていない感もあり、細かい統計の話に白熱しすぎて、もう少し広い視野で話してもいいのかなとは僭越ながら思いましたが。

そして、年齢調整をしていない時点で武田先生の1枚目の肺がん死亡数と喫煙率のグラフなど、完全に無意味であると嫌煙派の先生方が一番良くお分りのはずなの に、それを指摘しても論理的でない答えが返ってくるとともに、先生方以外の出演者のあまりにも一般的な学問に対する知識、理解不足によって、これ以上ない ほど、明確に論破しているのに、何一つ伝わらない現場の空気と嫌煙派の先生方の様子に見ていて心が痛くなりました。

唯一救いとなったのは、同じ医療従事者としても共感する部分の多かった磯村先生の禁煙タクシーのきっかけの話でした。
私自身タバコ自体につきましては、個人の趣味の範疇、嗜好品であると考えておりますので合法的な嗜好品である以上個人の自由であると考えております。
ただ、磯村先生の主張(喘息の子供がきっかけとなり禁煙タクシーの導入)のように、弱者目線に立って、吸わない人へのマナー、分煙の徹底が進むことを願って います。そして、最終的には医療費の増大を抑えるためにも、あんな体に悪い嗜好品を昔の人は吸ってたんだよ、という風な思い出に変わってしまえば幸いか な、と考えております。
長々と大変失礼いたしました。
どうしても番組を見て、根拠のある正確な情報を伝えようとする、先生方を応援したくなったものでして。

Alsさんコメント 2015年10月2日

番組振り返り

いただいたコメントとも重なりますが、この討論については「科学的な内容」「討論の技術」という2つの側面から振り返ることができます。

(1)科学的な内容でいえば、武田氏の完敗でした。つまり「タバコは体に悪い」という定説に対して、武田氏は有効な反論を1つも示せませんでした。(番組内で真偽不明だった主張についてもYoutubeコメント欄などで視聴者の方と検証しましたが、検証に耐えうるものは皆無でした)

(2)討論の技術については、禁煙チームの未熟さが目立ちました。とくに、「レッテル貼り」「論点逸らし」「データ捏造」についての対処が不慣れでした。そのため、正確な情報を視聴者に十分納得感をもって伝えることができませんでした。

今後の対応

(1)については、特に言うことはありません。今後何十年経っても、武田氏の主張(というより、ごまかし)が世界で評価される可能性は0%です。

(2)については改善の余地があります。いくつか例をあげておきます。

  • ディベートのセオリーを踏まえて討論する( →レッテル貼り、論点逸らし、データ捏造に対して、効果的に反論することができる)
  • 喜怒哀楽の感情表現、態度は大切(→視聴者の印象が大きく違ってくる)
  • 番組側の仕切りの問題・ルール設定(とくにデータ捏造については、番組が厳しく対処しないと、武田氏の逃げ道ができてしまう。これは視聴者を騙すことにもなってしまう)

タバコは、みなさん自身の命にも関係する問題です。武田邦彦をはじめとするニセ科学への対応については、引き続き考えていきたいと思っています。

※参考記事:「ニセ科学本」はデータをどう扱っているか?