ディベート大会で気づいたこと3つ

日本ディベート協会(JDA)秋季大会を観戦してきました。今回の論題は「日本は、公共の場におけるヘイトスピーチを法的に禁止すべきである」。この論題をめぐって二十六チームが一日かけて優勝を競います。わたしは午後訪れて予選一試合と決勝戦を見ました。初観戦して気づいたことを三つメモします。


会場の「国立オリンピック記念青少年総合センター」は東京五輪の選手村跡地。守衛さんが教えてくれた。


◎スピードの限界に挑戦

みなさん、どんな原稿でもいいので、できるかぎりのスピードで音読してみてください。ディベート大会の競技者はそれよりももっと速く、スピードの限界に挑戦するかのごとく喋ります。もちろんアドリブでは不可能です。大会本番までに案をねり、原稿を準備します。決勝戦に進出した両方チームは、練習試合も重ねてきたといいます。


◎まるでスポーツの試合

競技ディベートは一種のスポーツだともいえます。一時間を越える試合のなかで、肯定側・否定側の両チームが喋る順番はきちんと定められています。その持ち時間のなかで効果的な立論と反論を行います。主張の裏づけとなるエビデンス(証拠)は持参し、求められればいつでも見せられるようにします。

予選で三試合を戦ううち、少なくともいちどずつ肯定側・否定側を受け持ちます。つまり「日本は、公共の場におけるヘイトスピーチを法的に禁止すべきである」という論題について、賛成と反対両方の立場から準備し、本番の試合も戦います。「両方の視点から立論する」という訓練は、現実の議論を行ううえで大いに役立つことでしょう。


◎「名スピーチ」とは別物

競技ディベートを観戦して収穫だったのは「ディベートと名スピーチは違う」という気づきでした。これは「ディベートがスピーチの役にたたない」という意味ではありません。競技ディベートで重視されるのは議論の「論理性」です。一方、良質なスピーチには論理性のほかに、説得力のある態度や話し方が求められます。

【名スピーチの条件】
(1)論理性(競技ディベートで鍛えられる)
(2)態度や話し方(信頼感のある態度、発声、緩急、間の取り方など)

キング牧師ケネディ大統領、スティーブ・ジョブスなど歴史に残る名スピーチと、ディベート競技。どちらからも貪欲に学んでいきたいと、帰り道で。


勝戦の様子をスケッチ。最終的に審査員5人の票は割れて3:2で決着。