ニコラス・レイの質問

古い手帳を見てあきれてしまった。

これは2006年、つまり10年前の手帳だ。その年の使い始めに記したのは質問についての言葉だった。

ニコラス・レイ(1911-1979)はアメリカの映画監督で、ジェームス・ディーン主演の『理由なき反抗』(1955)でも有名だ。ぼくは学生時代に『大砂塵』(1954)という西部劇を観て、その迫力に圧倒された覚えがある。ここで引用した言葉は、たぶん映画か演技指導の授業で、彼が学生相手に語った助言だったと思う。

久しぶりに古い手帳を見るまですっかり忘れていたのだが、ぼくは何年にもわたって、毎年この質問についてのアドバイスを手帳に貼っていたのだった。

10年間、まったく進歩していない!?

いやいや、ここは「10年前から質問に興味があった」と、楽観的に受け取ることにしよう。

質問についていえば、昨日こんなことを考えた。
質問には2つの型がある。ひとつは(1)目的をもった質問もうひとつは(2)特定の目的をもたず好奇心から発せられる質問
質問のメソッドとしては(1)を使いこなせるようになることが重要だ。ところが、質問体質のようなものを育てるには(2)が欠かせない。木にたとえれば、(1)は幹や枝の部分で(2)は地中に広がる根っこの部分だ。根で十分に水分・養分を吸収してこそ、幹や枝もすくすくと伸びていくのだと思う。

さて…

「今日は何をしたいのだろう?」

もういちど新たな気持ちで、この質問を毎朝問いかけてみることにしよう。