質問を逆算してみる

何かを成し遂げた人物には、そうせざるを得なかった根本的な「問い」があるはずだ。たとえば「I Have a Dream」(私には夢がある)のスピーチで有名なキング牧師なら、高校の弁論大会で優勝した帰り道、バスの中で白人から席を譲れと強制されたとき、激しい怒りとともに「なぜ、バスの中で黒人が白人に席を譲らなければならないのか?」という疑問を抱いたことだろう。

歴史上の人物、いま活躍中の人、古今東西の発明・発見、すぐれたクリエイティブワーク…それらの原動力となった「質問」を逆算してみる作業は楽しいし、ぼくたちが自分自身の課題について問いを立てるときのよい手本になるに違いない。

たとえば、いくつかの発明について、想像も交えながらその元となった「問い」を書き出してみた。いかがでしょう。

【紙コップ】
「どうしたら安全に水が飲めるだろう?」...20世紀始めのアメリカ。結核菌を広めるという理由で、ブリキのコップはいくつもの州で禁止になった。ハーバード大学を中退したヒュー・ムーアは紙製の使い捨てコップとともに水を売り出した。ムーアの紙コップは後に独立した商品として世界中に普及した。

【エレベータ】
「ロープが切れても落下しないためには何が必要か?」。1853年ニューヨーク万博で、オーチスは吊り上げたエレベーターのロープを切断する実演を行った。この落下防止装置の発明によりエレベータは初めて実用化。オーチス・エレベータ・カンパニーは現在も世界最大のエレベータ会社である。

【圧力鍋】
「水の沸点が高まると、何ができるだろう?」...圧力が高くなると、水は100℃を越えても沸騰しない。1679年、フランスのパパンはしっかり密閉した鍋を用い、高温で肉と野菜を柔らかく煮ることに成功した。圧力鍋の発明である。

胃カメラ
「どうしたら真っ暗な人体内部の写真が撮れるだろう?」...戦後間もない1949年、オリンパスの光学技師・杉浦睦夫は、医師の依頼を受け、小型のレンズとフィルムとランプを備えたカメラの開発にとりかかった。人体内部、暗闇の中での撮影…翌1950年、世界初の胃カメラが日本で発明された。

ポラロイドカメラ
「写真ができるまでに、なぜこんなに待たなければいけないの?」...3歳の愛娘が発した素朴な質問は、発明家ランドにとって、何よりも刺激的なパズルとなった。すぐに現像できる写真の設計ーー1947年、娘の質問から数年後、ポラロイドカメラが誕生した。

質問を逆算して書き出す試みは、今後も継続していこうと考えている。

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