黒い目のきれいな女の子が18人いる!?(その2)

「黒い目のきれいな女の子が18人いる!?」のつづきです。

さて、ここまで11通りの解釈を見てきました。ネットで検索すると、同じ問題を取り上げている人が何人もいますが、やはり最大11通りのようです。
ここから先は、やや強引に解釈してみます。まず、修飾語が「女」と「子」の両方にかかると考えてみます。


  • 【解釈12】 「黒い目のきれいな」<「女の」「子」>……ある女と、その女の子供がいる。2人とも、黒くてキレイな目をしている。
  • 【解釈13】 「黒い目の」「きれいな」<「女の」「子」>……ある女と、その女の子供がいる。2人とも、黒い目をしていて、またキレイである。
  • 【解釈14】 「黒い」「目のきれいな」<「女の」「子」>……ある女と、その女の子供がいる。2人とも肌が黒く、目がキレイである。

さらに、修飾語の一部だけ2人にかかると考えてみます。


  • 【解釈15】 ある女と、その女の子供がいる。2人とも黒い目をしている。女はキレイだ。
  • 【解釈16】 ある女と、その女の子供がいる。2人とも黒い肌をしている。女は目がキレイだ。


  • 【解釈17】 ある女と、その女の子供がいる。2人とも黒い目をしている。子供はキレイだ。
  • 【解釈18】 ある女と:その女の子供がいる。2人とも黒い肌をしている。子供は目がキレイだ。

以上、強引に18通りの解釈を書き出してみました。でも12番目以降は、やはり日本語の解釈として間違いの部類に入るのではないかという気がします。
とはいえ、後半を省いたとしても「黒い目のきれいな女の子」に11通りの解釈が成り立つことに、ぼくは驚きました。

もちろん、普段、文を書いたり喋ったりするときには、なるべく多様な解釈を避けるための工夫が必要なことはいうまでもありません。
たとえば「黒い、目のきれいな女の子」とか「黒い、目のきれいな女。その子供」とかき分ければ、肌が黒いのか、目が黒いのか、女の子なのか、女がいてその子供がいるのかが理解しやすくなります。

つまり、点を打つ時は、点を打つ。誤解が起きそうだったら、語順を変えてみる。そういう点検をしないといけないわけです。
 「直結の原則」というのがあって、なるべく「かかり」と「受け」をくっつけていったほうがいいんです。

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』(新潮文庫、159ページ)

アイロン(論理研究会)ブロクのまとめとしては…

・ひとつの文でもいろんな解釈が成り立つ場合があることを知っておこう。
・文を書くときには、なるべく解釈がまぎれる余地が少ない表現を心掛けよう。
・議論するときには、お互いに文の解釈がすれ違っていないか確認しよう。

…てなところでしょうか。

黒い目のきれいな女の子が18人いる!?

「解釈の分かれる文にご用心!」の続きです。
あのあと、井上ひさしさんの本を開いてみてビックリしました。井上ひさしさんはこんな風に発言していたのです。

「黒い目のきれいな女の子」。これだけの短い文に実は十八通りの意味あいがあるのです。

18通りですか! これはタイヘンです。

黒い目のきれいな女の子。

この短い文は、本当に18通りの解釈が成り立つのでしょうか。考えてみましょう。
まず、この文は「女の子」を一語ととるか「女」の「子」ととるかで、解釈が分かれます。

「女の子」を一語とする場合は3通りの解釈ができます。

  • 【解釈1】 「黒い目のきれいな」「女の子」……これは、女の子が、黒くてキレイな目をしているということ。
  • 【解釈2】 「黒い目の」「きれいな」「女の子」……これは、女の子が黒い目をしていて、しかもキレイだということ。
  • 【解釈3】 「黒い」「目のきれいな」「女の子」……これは、女の子の肌の色が黒く、またきれいな目をしているということ。

つぎに、「女の子」を「女」の「子」に分けて解釈する場合はどうなるでしょう。
まずは、「女」に焦点を当てます。ある「女」について、上記の「女の子」の場合と同じ3通りの解釈が成り立ちます。その女の「子」というわけですね。


  • 【解釈4】 「黒い目のきれいな」「女の」「子」……女は黒くてキレイな目をしている。その女の子供。
  • 【解釈5】 「黒い目の」「きれいな」「女」の「子」……女は黒い目をしている。しかもキレイだ。その女の子供。
  • 【解釈6】 「黒い」「目のきれいな」「女の」「子」……女は肌の色が黒い。またキレイな目をしている。その女の子供。

さて、同じような3通りの解釈を「女」ではなく「子」に当てはめることもできます。


  • 【解釈7】 「黒い目のきれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は黒くてキレイな目をしている。
  • 【解釈8】 「黒い目の」「きれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は黒い目をしてる。またキレイな子でもある。
  • 【解釈9】 「黒い」「目のきれいな」「<女の>子」……ある女には子供がいる。その子は肌が黒い。またキレイな目をしている。

さらに、修飾語が「女」と「子」に別々にかかる場合もあります。


  • 【解釈10】 「黒い目の」「<きれいな女の>子」……その子供は黒い目をしている。また、キレイな女がその子の母親である。
  • 【解釈11】 「黒い」「<目のきれいな女の>子」……その子供は肌が黒い。また、目のキレイな女がその子の母親である。

ふう〜。ここまでで11通りの解釈ができました。
結論からいえば、日本語としてまあ許されるだろうという解釈はここまでの11パターンではないかと思います。

→黒い目のきれいな女の子が18人いる!?(その2)