くちびると胸の秘密

女優の上戸彩は帽子やサングラスで変装して街を歩いても、唇が見えているだけで、本人だとバレてしまうそうだ。
その話をどこかで聞いてから、上戸彩を見るたびに、ぷるんとして口角のあがった唇を気にするようになった。

粘膜でできた唇、また、女性の胸がふくらんでいることは、他の類人猿には見られない人類の特徴である。これはなぜか?

ゴリラやチンパンジーなど、他の類人猿は足だけでなく手の甲も使って歩く。これを「ナックル・ウォーキング」という。
それに対して人類は直立二足歩行をする。直立二足歩行によって、ぼくたち人類は手を自由に使えるようになり、脳が大きく発達した。
一方で、四つん這いやナックル・ウォーキングではよく見えていた生殖器が、直立の姿勢では見えづらくなった。これをカバーするために、唇は生殖器に、乳房は臀部(でんぶ)に似るようになったのだそうだ。

メイクやファッションの流行。異性のちょっとした仕草。
日常の小さなことにも、数百万年の人類史が反映されているのかもしれないと思うと、ちょっと頭がくらくらしてくる。

(参考)
『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』(溝口優司・国立科学博物館人類研究部長著/ソフトバンク新書)