ニーチェの永遠回帰は終わらない

うろ覚えで恐縮だが、晩年のニーチェが『ツァラトゥストラかく語りき』で唱えた「永遠回帰」という思想がある。
そこで語られるのは「この世のできごとは永遠に繰り返される。だからこそ、我々は自分の生を絶対的に肯定しなければならない」という壮大な世界観・人生観だ。

この永遠回帰をの思想を成り立たせる根拠は何だろう。「この宇宙で起こりうる組み合わせは有限。その一方、時間は過去から未来へと無限に続く。だから、すべての起こりうる可能性は永遠の時間のなかで幾度となく繰り返される」というようなものだったと思う。
ニーチェの思想は、古代世界の循環的な時間概念とともに、当時の確固たる常識だったニュートンの時間と空間の概念を下敷きにしているわけである。

ニーチェが死んで5年後、20代半ばの若きアインシュタイン特殊相対性理論を発表した。それまで揺るぎないものと思われていた時間と空間の概念は根底から覆されることになる。それは、永遠回帰の思想が成立するための前提が崩れてしまったということだ。

ここで彼の思想はゴミ箱行きになり、忘却の彼方に追いやられてしまったのだろうか。
ところが意外にも、彼の思想はいまだに多くの人々の心を捉えて離さないのである。