人間とは何か?(遊ぶ人)

遊びをせんとや生まれけむ
戯れせんとや生まれけん
遊ぶ子供の声きけば
我が身さえこそ動がるれ

梁塵秘抄

胎児は人間か?(3)のつづきですが、もう少しテーマを広げて「人間とは何か?」にします。この流れで、「定義」や「言葉の意味」について考えていこうと思っています。

われわれ現生人類をあらわす学名が「ホモ・サピエンス」であることは有名です。これはラテン語で「知恵のある人」という意味。「ホモ」が「人」、「サピエンス」が「知恵のある」ですね。

オランダの歴史学者であるヨハン・ホイジンガ(1872-1945)は1938年に出版した著書で、「ホモ・サピエンス」をもじって「ホモ・ルーデンス」という用語を提唱しました。こちらは「遊びをする人」という意味。遊びを人間活動の本質として人間を規定したわけです。

「ホモ・ファーベル」(工作する人)という言葉もあります。こちらはハンナ・アーレント(1906-1975、政治哲学者)やマックス・シェラー(1874-1928、哲学者)による用語。道具を作り使用することで人間を特徴づけています。
他にも、「ホモ・ロクエンス」(話す人。言葉をもつ点を人間の本質とする)、「ホモ・デメンス」(錯乱人)、「ホモ・レリギオス」(宗教人)なんて用語もあるようです。

勝手な想像ですが、19世紀の中頃までは「人間とは何か?」なんて真面目に考える人はほとんどいなかったのではないかと思います。人間は昔から人間だし、これからも人間であり続ける。他の動物とは違う。そのことを疑う理由は存在しなかった…。

ところが、チャールズ・ダーウィンが1859年に『種の起原』を出版して、状況は一変します。自然選択説に従えば、生物は環境に適応するように変化するものになります。
するとどうなるか。人間だって神から撰ばれた唯一絶対の存在ではなくなります。
人間は、「人間とは何か?」について、もういちど最初から考える必要がでてきたというわけです。

→春は、いつからいつまで?(言葉の意味について)