「愛」は定義できるか?

※春は、いつからいつまで?(コトバの意味について)のつづき

愛は現実、現実は愛
愛は感じること、感じることは愛
愛は愛されたいとのぞむこと

愛は触れること、触れることは愛
愛は届くこと、届くことは愛
愛は愛されたいと求めること

愛は君
君と僕
愛は知ること
僕たちにそれが可能なことを

愛は自由、自由は愛
愛は生きること、生きることは愛
愛は愛されることが必要なこと

ジョン・レノン「ラヴ」

Love is real, real is love
Love is feeling, feeling love
Love is wanting to be loved

Love is touch, touch is love
Love is reaching, reaching love
Love is asking to be loved

Love is you
You and me
Love is knowing
We can be

Love is free, free is love
Love is living, living love
Love is needing to be loved

Love - John Lennon

ジョン・レノン「ラヴ」という歌の中で、「愛」をさまざまな言葉で言い換えようとしています。「現実」「感じること」「のぞむこと」「触れること」「求めること」「君」「君と僕」「知ること」「自由」「生きること」「必要なこと」…。

ではこの中で、愛をいちばん正確に表現しているのはどの言葉なのでしょう?

ためしに、日本語の辞書で「愛」を引いてみます。

あい【愛】
(親子や男女のあいだで、また、音楽や絵に対してなど)胸がいっぱいになるほど切ない、好きだ、だいじにしたいと思う気持ち。
(角川必携国語辞典)

なるほど。「愛」という言葉の悪くない説明に思えます。

では、この説明を流用して「愛」という歌を作るとどうなるでしょうか?

「愛」

愛とは
親子や男女のあいだで
また
音楽や絵に対してなど
胸がいっぱいになるほど切ない
好きだ
だいじにしたいと思う気持ち

う〜ん。正確さは増しますが、歌としてはあまり心に響いてきませんね。
ジョン・レノンの、何とか言葉を撰んで、リアルな感覚を伝えようとする、そんな一種の不器用さが、人の心を打つのかもしれません。

「愛」に限らず、ぼくたちは言葉の意味を、ああでもない、こうでもない、と手探りしながら生きています。誰もがよく知っていると思うような基本的な言葉ほど、定義や辞書的説明の網からこぼれ落ちるものが多いような気がしてならないのです。

→ロゴスとロジック(言葉と論理)