木の描き方とロジックツリー(5)中国の古い百科事典
中国の古い百科事典によると、動物は次のように分けられるそうです。
- 皇帝に属するもの
- 香の匂いを放つもの
- 飼いならされたもの
- 乳呑み豚
- 人魚 お話に出てくるもの
- 放し飼いの犬
- この分類自体に含まれているもの
- 気違いのように騒ぐもの
- 算えきれぬもの
- 駱駝(らくだ)の毛のごく細の毛筆で描かれたもの
- その他
- いましがた壺をこわしたもの
- とおくから蝿のように見えるもの
私たちが見慣れた現代的な分類とはかなり違いますね。
たとえばこの分類では象はどこに入るのでしょうか。「皇帝に属するもの」でしょうか。「お話に出てくるもの」でしょうか。それとも「とおくから蠅のようにみえるもの」でしょうか。
犬はどこに入るのでしょうか。「飼いならされたもの」でしょうか。「算えきれぬもの」でしょうか。「放し飼いの犬」という項目もありますね。
見れば見るほど奇妙なこの分類。種を明かすと、実在の百科事典に載っていたわけではなく、アルゼンチンの詩人・作家・学者であるボルヘスの作品に登場する想像上の分類でした。 (参考)東ゆみこのウェブサイト (4)ボルヘスとフーコーの巻
さて、ある概念をそれより細かい下部の概念に分けることを伝統的論理学では「区分(division)」といいます。この区分を行うにあたっては3つの規則があるとされています。
区分の規則
- 区分は各段階において一定の基準に従ってなされなければならない
- 区分された下位の部分は互いに共通部分をもってはならない
- 区分された下位の部分はすべての場合を網羅せねばならない
まず「1.区分は各段階において一定の基準に従ってなされなければならない」について考えてみます。
AKB48のメンバーをグループ分けするとしましょう。
チームごとに分けるなら、「チームA」「チームK」「チームB」…というようになります。年齢で分けるなら、「20歳未満」「20歳以上」になります(もっと細かく分けてもかまいません)。出身地方や都道府県で分けることもできます。「総選挙」の順位に応じて分けることもできます。
要するに、基準が一定なら、グループのメンバーを小さなグループに分けて整理することができます。
でも、下のような基準を同時に採用するのはヘンです。(大島優子は、篠田麻理子は、どのグループに入ればいいのでしょう?)
- 年齢が18歳以上のメンバー
- チームKとBに属するメンバー
- 総選挙で上位30位以内に撰ばれたメンバー
- 身長が160センチ以下のメンバー
大きなグループを小さなグループに分けるときに「年齢」「所属チーム」「選挙の順位」「身長」など別々の基準を同時に採用すると、下位のグループに属するメンバーが重複したり、また、どこにも属さないメンバーがでてきてしまいます。
これでは最初に紹介した「中国の古い百科事典」状態ですね。