麗子先生似顔絵


この絵はブログテーマ(論理)とは何の関係もありません。(意外なところで繋がっているかもしれないけれど)

フリーペーパーR25などでも活躍中のイラストレーター・沼田健さん四コマ漫画「さきがけ麗子先生」ブログ連載5周年ということで、ぼくも似顔絵企画に参加してみることにしました。全然似ていません。沼田くんゴメン!

鳥の視点とロジックスケッチ

あるクリティカル・シンキングの本に「思考の十大誤謬」が載っている。そのうちの1つが「グループ思考」だ。

ライバル関係にあるビール会社A社とB社があるとする。A社の社員が「A社のビールはB社のビールより美味しい」と言う。あるいはB社の社員が「B社のビールはA社のビールより美味しい」と言う。ごく自然な心理だろう。しかしこれといった根拠もないのに、自社のビールの優位性を客観的事実のように主張するとしたら、その社員は「グループ思考」の落とし穴にはまっている。

グループ思考は、こんな仕組みになっている。

自分が属するAグループは正しい。

なぜなら……だからだ。
(根拠を恣意的に提示)

AグループとBグループが対立している場合、以下のようになる。

【Aグループのメンバー】
自分が属するAグループは正しい。
なぜなら○○だからだ。(恣意的な根拠)

【Bグループのメンバー】
自分が属するBグループは正しい。
なぜなら××だからだ。(恣意的な根拠)

どちらのグループのメンバーも、自分が所属するグループが正しいとする結論がまずある。そして、結論を補強するための論拠を後から恣意的にさがしている。
畢竟、両者が用意した根拠は網羅的でなく恣意的なので、議論がかみ合わない。

国や民族その他のグループが対立しているとき、あるいは個人と個人の意見が対立しているとき、それが真に解決すべき問題である場合は、結論を戦わせる前にワンクッションおくのがいいと思う。いわば「急がば回れ」戦術である。

そのワンクッションとは、鳥瞰的な視点だ。

「Aが正しい」「Bが正しい」という結論はひとまず棚上げにしておいて「AとBの主張のどこが違っているか」に注目する。意見の対立の当事者としての視点を離れ、上空飛行を試みること。

この「鳥の目への変換」を、ぼくは「ロジックスケッチ」と呼んでいる。

【ロジックスケッチ的な考え方】

AとBの意見の相違点はどこにあるか。

それら相違点はそれぞれどんな前提に基づいているか。

争いから距離を置き、まずは光景をスケッチすることに徹してみる。最終的にどちらの言い分が正しいのか、どうすべきなのかという結論云々は、このスケッチが終わってからでも遅くない。

「ええもん」vs「わるもん」

関西育ちのぼくは子供の頃、テレビのキャラクターを「ええもん」と「わるもん」に分けていた。「ええもん」は「良い者=善玉」、「わるもん」は「悪い者=悪玉」である。昔の子供番組はとくに善悪二元論に色分けされていたように思う。(「ガンダム」はそうでないところが新鮮だった)

フィクションだけではない。歴史や社会も同じだ。織田信長が「ええもん」なら今川義元は「わるもん」。アメリカが「ええもん」ならソ連は「わるもん」。そんな二分割が身の回りのどこにでも転がっていた。

週末、テレビの報道番組で強大化する中国の問題がとりあげられていた。世界ウイグル会議や、南シナ海の島をめぐる中国とフィリピンの軋轢、尖閣諸島についてなど。日本人コメンテーターに混じって、中国人の大学教授が孤軍奮闘、中国を擁護していた。

これ自体は珍しくもない光景である。が、見ているうちに、ちょっとした疑問がわいてきた。

【Q】
なぜ日本人は日本を正しいと思い、中国人は中国を正しいと思うのか?

たとえば、ある問題について日本と中国の意見が対立しているとしよう。
この場合、たいていの日本人は日本の立場を正しいと思い、たいていの中国人は中国の立場を正しいと思う。少なくともそんな傾向がある。

これは、実に不思議である。

A国とB国の意見が対立しているとき、それぞれの国民100人ずつにアンケートをとってみよう。もしも全員がまっさらな気持ちで判断をくだすならば、たとえばこんな結果が予想されるだろう。

  • A国人:A国に賛成50人・B国に賛成50人
  • B国人:A国に賛成50人・B国に賛成50人

しかし現実には、こうはならない。たとえば以下のようになる。

  • A国人:A国に賛成90人・B国に賛成10人
  • B国人:A国に賛成10人・B国に賛成90人

自分が所属するグループに有利な判断を下しやすい思考の傾向を「グループ思考」と呼ぶ。「自国を愛する」以上の意味が付与された愛国心はグループ思考の典型だ。

自国と他国の意見が対立しているとき、次のような思考を行う人が多いのではないだろうか。

自国が正しいことを直観する。

自国の正しさを裏付ける論拠をさがす。

ぼくたちがこういう思考を行っているとき、相手の国民も同様の思考を行っている可能性が高い。

「ええもん」と「わるもん」の二元論は、大人になっても意外に根強いのではないかという気がしている。

→鳥の視点とロジックスケッチ