ゴールデン街のバーと『リンゴで身につく質問学』

2日連続、新宿で芝居を観ました。その後、2日ともゴールデン街のMというバーに行きました。

最近までひとりでバーに行くという習慣はなかったのですが、旧知のお姉さんがママをやっているバーをたずねてみると意外に心地よかったので、新宿で用事がおわると訪ねてみるようになったのです。

なぜ、バーに行けるようになったのか?・・・ぼくの場合は、「傾聴」が関係していると思います。

ぼくはわりと人見知りをするタイプなので、以前はお酒の席でも、目の前の相手と「何を喋ろうか?」と考えて緊張していました。共通の話題があるときはいいけれど、そうでないときは「どうしよう」「早くこの場から解放されたい」と思っていました。

ところが傾聴を学んでからは、人の話を自然と楽しめるようになりました。自分が話さなくても、相手の話を興味深く聞ければ、相手といい関係を築くことができます。あるいはトピックに興味がなくても、その話をしている相手の「気持ち」にフォーカスすることで、相手といい空気感を共有することができるのです。

たまたま2日連続でバーMに行くことになったわけですが、1日目と2日目は、ぼくにとってちょっとした違いがありました。1日目にできなかったことが、2日目に少しだけできたのです。

それは「自分の本の話をすること」でした。

上に書いたように、ぼくは自分の話をするためにMに行ったわけではありません。でもママから「最近どんなことやってるの?」と聞かれたら、本の話がしたいと思っていました。でも1日目は、「もし聞かれたとしても、うまく話せないだろうなあ」と思いながら帰宅しました。

たとえば「質問についての本を書いています」言うと、「質問の本...どんな?」と聞かれます。でもその後の説明が抽象的になってしまうと、その場にいる人たちは「???」になってしまいます。どんな風に話したら身近な人たちが振り向いてくれるのか、わかりませんでした。

ところが2日目には、あるイメージが浮かんでいました。それは「リンゴ」です。1年ほど前、このブログに書いたリンゴの話...


「りんごのこたえ」

りんごが一個、木から落ちてきました。

「なぜりんごは落ちるのに月は落ちてこないのだろう?」
そう考えたひとは、科学の扉をひらきました。

「アップルパイのとびきり美味しい作り方は?」
そう考えたひとは、街いちばんのパティシエになりました。

「りんごに傷があってもよろこんで買ってもらえるには?」
そう考えたひとは、大金持ちになりました。

「りんごを本物よりも本物らしく描くには?」
そう考えたひとは、誰よりもじょうずな画家になりました。

おなじりんごでも
質問がちがえば
こたえもちがってきます。

「林檎」の漢字が気になって辞書をひいたら、
「鳥があつまる木」という意味をみつけました。

「アップル」という企業の名前をしらべたら、
マッキントッシュ」がりんごの品種だと知りました。

ある思想家はこんな言葉をのこしています。
「答えではなくどんな質問をするかで、その人物を判断せよ」

なるほど。
こたえの数は、質問の数だけあるのです。

りんごをかじりながら、
明日はどんな日になるか、
想像をふくらませてみました。


http://d.hatena.ne.jp/yosikazuf/20151030/p1

質問によって、答えも変化する。そのたとえに、ぼくはリンゴを使っています。

「じゃ、いっそのこと、本全体をリンゴのイメージで作ってみたらどうだろう? たとえば『リンゴで身につく質問術』というような…」......そんなイメージをもって、バーMに行ってみました。

しばらくすると、初対面の女性たちと話す機会がありました。ぼくが渡した手製の名刺には「質問学」と書かれています。この名刺はずっと使ってなかったのですが、今回はじめて、おそるおそる渡してみました。

すると「質問学…??」と聞かれます。そこでぼくは「質問によって答えが変わる」ことを、リンゴの例で話しました。つぎに、「質問というと、コミュニケーションに関係がある??」と聞かれると、「どんな問いを持つかによってコミュニケーションのあり方が変わる」例を話しました。

ぼくの話が初対面の人たちにどれだけ届いたかはわかりません。でも、前の日には「どう話していいかわからない」と思っていたのが、「無理しなくても自然と話したくなった。話せた」という感覚は、ぼくにとってはすごく意味のある経験でした。人に話すことによって、企画は育っていくものだと思うからです。

「アダムとイブ」「ウィリアム・テル」「ニュートン」「アップル・レコード(ビートルズ)」「アップル(コンピュータ)とマッキントッシュ」「和リンゴと西洋リンゴ」…などなど、リンゴのエピソードを上手く使いながら、コミュニケーション、自己実現、問題解決など質問の役割を面白く伝える…。いろんな人に話しながら、まずはそのイメージを具体化することに励んでみようと思います。

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